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COLUMN |
SURF COLUMN 2007/7/4 |
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『第5回目 FREERIDEの想い出(前編)』
70年代中頃。 一本のサーフィン映画『FREERIDE』が公開された。僕にとってはある意味運命の映画。 『FREERIDE』を観に行ったあの日の想い出は、 30年以上を経過した今現在も、 僕にとって大切な宝物なのです。
カリフォルニアのビル・デラニーが監督し、ショーン・トムソン、ラビット・バーソロミュー、 MRが主演した映画『FREERIDE』は、 既にこの遊びにドップリと浸かっていたサーファー達は勿論のこと、 当時のサーフィン・ブームとも相俟って、 僕らのようなアメリカ大好き少年たちの間でも、 雑誌「POPEYE」等を通じてけっこう話題にはなっていた。
話題といったってあくまでもサーフィン映画のレベルである。 FILMも16mm(因みに劇場で公開される一般の映画は35mm)だし、 そのプリントを自力で輸入した湘南のサーファー達が、 全国行脚して小さな公民館や公会堂といったレベルの場所を借りて公開するのである。 世間的には、いたってアンダーグラウンドな話だった。当時学生だった僕は、 確かあの日、 東京の何処か公民館のようなところだったと思う、 当時唯一の専門誌「サーフィンワールド」の情報を頼りに、 友人と連れだってこの映画を観に行ったのだった。 その頃、 筋金入りの “陸” サーファーだった僕と友人は、 会場を取り巻く “モノホン” のサーファー達の列が醸し出すやんちゃな雰囲気と、 むせかえるほどのムスク(当時大流行していたフレグランス)の香りにえらく緊張したのを憶えている。
おそるおそる入った会場のロビーでは、 えらくいいオンナを連れた色男やら、 スケートボードで傍若無人ぶりを発揮する輩やら、 さらには、 みんながみんな知り合いなのか、 滅茶苦茶カジュアルな挨拶が飛び交い、 正真正銘の “陸” だった僕らは、 そこに展開されるカッコ良すぎる世界からのプレッシャーに、 深~い孤立感を憶え、 ピークに達した緊張感と共に上映会場内に足を踏み入れたのだった。
会場内が、 これはこれでまさに立錐の余地もない状態。 通路という通路はすべてぎっしりと人で埋まり、 壁際も立ち見の観客で一杯。 ま、 現在ならば、 間違いなく消防法で訴えられかねない、 そんな状態である。 最初から肩身の狭い僕たちは、 壁際のコーナーにやっとこさ居場所を見つけ、 異様な熱気の中、 あくまでも目立たぬように、 今か今かと上映開始を待ったのだった。
そして会場の照明はゆっくりと落とされた。 と同時に、 会場内が怒濤のような歓声と嬌声に埋め尽くされる。 やがて小さなスクリーンに、 あのピアノが奏でる流麗なメロディと共に、 海面を切り裂くシングルフィンを水中から捉えたあの映像が映し出されると、 会場全体に、まるでコンサートのような爆発したエネルギーが渦巻き出した。 さらに拍車のかかった歓声で、 会場は地響きに揺れる。 その情景に僕の心は鷲づかみにされ、 揺さぶられる。 その時僕は、 それまでに経験したことのない新しい興奮と感動に、 正直震え、 そして呟いた。
「サーフィン映画!ヤッベぇ~!」
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