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COLUMN |
SURF COLUMN 2007/6/20 |
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『第4回目』
僕は映像制作を生業としているサーファーだ。もちろん、今や中高年がその中心層となってしまった波乗りの世界、そんなサーファーは決して珍しい存在ではないし、元来何を仕事としているかなんて事は、波乗りとは関係のない話ではある。
しかし古くは50年代の昔から、映像とは切っても切り離せない関係を継続してきた波乗りの世界では、こと映像制作という仕事に関していうなら、歴史的に見ても、まったく関係ない!とは言いきれない部分はある。気づけば僕も、波乗りのビデオをプロデュースしたりディレクションしたりと、いつの間にかサーフィン・ビデオ制作を手懸けるビデオ・メーカーと相成った次第であるから、やはり映像を仕事とする人間にとって、波乗り映画やビデオを作るといった行為は、ある種、宿命的な事なのかも知れない。
さて、そんな僕は、自分が担当する雑誌のページに、かつて「サーフィンビデオを作ろう!」なんてテーマでコラムを書いた事がある。なんの事はない。テーマに困ってしまった結果、自分に最も身近な話を題材にしてしまっただけの事で、要はやっつけである。そのやっつけコラムにどういう訳か刺激され、ビデオ制作という迷宮に足を踏み入れてしまった男こそが、今、日本のエクセレント・コンディションで、最高のバレル・パフォーマンスを披露するサーファー達の姿を捉えたDVD「EXIT/COLD WATER」をディレクションしたPARUOその人である。
PARUOと知り合ったのは、確か5年ほど前の事だった。インターネットを通じて連絡をとるようになり、処女作となる小野嘉夫プロのシグネチャー・ビデオを見せに、地元の茨城から僕の東京オフィスを訪ねてきた時が最初の出会いだったと思う。上記の話も、その時に本人から聞いた話だ。
第一印象は、地方からやってきた朴訥とした青年。しかし彼自身が作ったというそのビデオ作品は、その外見の印象とはかなり趣を異にするものだった。
なんせ処女作である。全体的には冗漫で商品としてのインパクトには欠けるものでは確かにあったが、しかし、編集の腕にはプロも顔負けの鋭いセンスが感じられたし、なにより映像を愛する熱いハートが、色濃く全体に反映している好作品だった。そろそろ我が国にもビデオ・メーカーがちらほらと姿を現しつつあった当時、そんな中にあっても、存在感のある作家性が貴重だと感じた事を今でも憶えている。
その後、茨城を代表するプロサーファー達と共に、北のコーストラインを奔走しフッテージを貯めたPARUOは、その2年後に第一弾「EXIT」を発表。それからさらに2年の歳月を経て今回の「EXIT/COLD WATER」が誕生した。
もちろんPARUOのキャリアは始まったばかり。前途洋々とは行かない。これから、乗りこえなければならない多くの障壁が待ち受けている。だから手放しでは喜べないのだが、しかし、映像作家として確かな一歩を、たくましく踏み出している彼を見るにつけ、「瓢箪から駒」とは良く言ったもので、無責任なコラムが、たまには良い結果を生み出す事もあるのだな・・・と、ひとりほくそ笑む僕だった。
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