interstyle

INTERSTYLE 2025
開催:2025年2月12日(水) 〜 2月13日(木) 会場:パシフィコ横浜詳細 »
開催:2025年2月12日(水)〜13日(木)
会場:パシフィコ横浜詳細 »

プレス

ロゴ・写真

アクセス

交通案内
宿泊案内

Youtubeチャンネル

INTERSTYLE movie

コラム

武知実波『第3回 地域とサーフィン』

2018/04/04 tag: 武知実波

こんにちは。
最近は春を感じられる陽気が嬉しく、いよいよ来たるシーズンに胸躍っています。
個人的な話ですが、先日3月23日に無事に徳島大学大学院総合科学教育部地域科学専攻の博士前期課程を修了し、修士の学位を取得しました。
6年間にわたる大学、大学院生活。「非常に充実していました」の一言では全く足りない程に実り多く、私の人生を語る上で欠かせない大切な経験ができた時期となりました。
学生生活を終えての想いはブログに記してありますのでご覧いただければ幸いです。

さて、今回のコラムのテーマは「地域とサーフィン」
前回の第2回目で書かせていただいた「教育とサーフィン」では、主に大学での研究をベースに教育とサーフィンとの相互作用の可能性について個人的な意見も加えて言及しました。
そして今回、大学院で学んできたサーフィンツーリズムを用いた地域活性化に着目し、テーマに挙げさせていただくこととします。

自身の研究では、サーフィンツーリズムとはサーフィンを目的とする旅行行動であり、単にサーフィンを「する」だけでなく、「みる」ことや「ささえる」活動まで広げ、目的地としての魅力を高め、そこまでの移動や滞在する民宿、食事、土産やオプション観光の消費などを含めてサーフィンツーリズムとしています。また地域活性化はサーフィンや海を目的のひとつとして来訪する交流人口及び定住・移住者人口が増加することであると定義づけています。

サーフィンを地域活性化に向けた行政の施策に取り入れている地域としては、千葉県一宮町や宮崎県日向市などが好例です。
千葉県一宮町はご存知の通り2020年東京オリンピックのサーフィン種目開催地であり、宮崎県日向市では昨年ISA世界ジュニア選手権が開催され、また「ヒュー日向!」を掲げてサーフィンによる活性化が精力的になされている地域です。
両地域には良質なサーフポイントが多数存在し、大規模な大会が開催されることは勿論、サーファーの交流人口及び移住者も多く、まさにサーフィンツーリズムを地域のために有効利用している地域と捉えることができます。

私が生まれ育ちサーフィンを覚えた徳島県から高知県にかけて続く地域、通称「四国の右下」の沿岸にも特徴的なポイントが多数存在し、初心者から上級者まで幅広いレベルのサーファーが楽しめる環境がそこにはあります。
特に研究対象地でもあり私が練習のために通っている高知県東洋町の生見サーフィンビーチは過去には世界規模の大会も開催されており、関西のサーフィンのメッカとも言われるサーフポイントです。
高知県東洋町、隣接する徳島県海陽町、そして徳島県はサーフィン大会の開催に対して非常に協力的で、これら行政との関係構築はサーフィンの発展に必須であると感じています。

takechi photo

takechi photo

研究では生見を訪れるサーファーの特徴や行動傾向を把握するために大会開催時と普通の休日時にサーファーに対してアンケート調査を行いました。
生見を訪れているサーファーのうち72.2%は近畿圏在住のサーファーであることが明らかになっていることからも関西圏のサーファーには親しみのあるポイントであることが窺えます(n=378)。
人口2,620人の東洋町には彼らを含む年間8万人のサーファーが来場することからサーフィンは欠かすことのできない観光資源として注目されていますが、東洋町の人口は減少の一途を辿り、職がないことが人口流出の一因にもなっていることから、サーフィンは新たな産業としても期待されています。

また移住への関心については徳島県外から訪れたサーファーの内、「条件が整えば移住も考えたい」と答える割合が25.7%を占めていることから、移住を検討し得るサーファーが存在することが明らかとなっています(n=325)。
また徳島県南部へ移住したサーファーへのインタビュー調査からは、移住の障壁となっているのは仕事・収入であること、そして移住選択には移住後の安定した生活ができる見通しの有無、つまり職と居住の用意ができており、かつサーフィンを取り入れた生活を実現可能とする準備が移住前からできていることが求められる傾向にあることが分かっています。
これらのことからサーファー移住者受け入れ地域が移住希望者への情報提供と支援があればこの25.7%は住民となり納税者となり地域の一員となる可能性があると考えられます。

しかし必ずしも交流人口や移住者を増やせばいいということではありません。
元来キャパシティが決まっている海岸にサーファーが増えるということはアクシデントが増える可能性があります。もちろん一概には言い切れませんが、それをマネジメントしながら活性化にサーフィンが活用されるなら、それは最も理想的な形ではないかと考えています。

またサーフィンを用いた地域活性化には看過できない根の深い問題があります。それはサーファーに対する地域の理解が不足している点です。地域に対する不作法によってサーファーの印象が悪くなり、それが結果的にサーフィンに対する理解の希薄化に繋がっている現状は各地で現実として存在しています。サーフポイントにおいて、その地を守り維持している人々、つまりその地域のローカル(勿論サーフィンするしないに関わらず)の意思がその地域の有り様に反映されることは想像するに易い。そのためサーファーが地域と上手く関係を築くためにはサーファーからの歩み寄りが必須であると考えています。私たちは楽しみを得られる場所を共有してもらっている立場であり、その立場として共にその地の環境維持に協力することは最低条件だと思います。

地域資源を活かしたサーフィンのようなスポーツを活かした地域振興施策が今後各地で活発になされ、地域再建に貢献できる可能性はあると思います。
そのためにはサーフィンが地域活性化に活きる有用性を発信することが求められ、私たちサーファーによる地域への歩み寄り、理解を求めた動きが必須となります。
サーフィンがいかに地域に貢献できる可能性を有するのか、それを話せるのは体験者である私たちサーファー以外の何者でもないと思います。より地域に根ざし理解の輪を作っていくこと、これからサーフィンをより良い形で残していくために今私たちが取り組むべき作業なのではないでしょうか。

私が住む徳島県阿南市では平成元年に阿南市サーフィン連盟が阿南市体育協会に加入し、その後徳島県サーフィン連盟が徳島県体育加入に加盟しています。
市単位での体育協会への加盟は日本初、都道府県単位で加盟している地域は昨年時点で徳島県含め3地域だそうで、この制度のおかげで阿南市及び徳島県に住む私たちは小学生の頃から学校や体育協会でサッカー、野球の選手たちと同じように表彰されています。
そのため私たちにとってサーフィンはスポーツであり、自身たちは競技者であるというアイデンティティが、自分ではなく、世間から作られていったのだと思います。
サーフィンが地域に根ざしていることを判断する指標はありませんが、各地域の体育協会への加盟はサーフィンがスポーツとして認められるひとつのステップと認識できるのではないでしょうか。
そしてこれからサーフィンがより広く受け入れられるためにはサーフィンの国体への加入が必要条件となると私は考えています。
国や行政からの選手育成費をはじめとする様々なサポートを受け、よりその社会的地位を向上させていく先にサーフィンの生き残りの道が拓けているような、私はそんな気がします。もちろんご意見は多々あることは承知で、議論は不可避だと思いますが、その議論は間違いなく良い方向に向くと思います。

私たちはオリンピックを迎えますが、大切なのはその機運をサーフィン発展に有効利用することです。2020年の夏以後に正のオリンピックレガシーを残していけるように尽力していかなければなりません。
私が考える正のレガシー、それはサーフィンの国体加入とそれに伴うサーフィン及びサーファーの社会的地位の向上、確立です。
手持ちのカードは決して多くはありませんが、適切で最適な選択と勇断と行動があれば後生に残るレガシーを作ることは不可能ではないと思います。
そのために今から地域におけるサーフィンの位置を私たちの手で押し上げる努力をしていくべきだと思います。

これまで3回にわたって私の考えを共有させていただきましたが、早いもので私のターンは次回で最終回を迎えます。
次回は総合考察です。ひとりの24歳の女性サーファーとして、純粋な文を寄稿できれば幸せです。
では皆さん、次回最終回乞うご期待ください。
 

武知実波プロフィール
1993年徳島県阿南市生まれ 徳島大学大学院総合科学教育部 卒業
JPSA公認プロサーファー/パタゴニアサーフィンアンバサダー/サーフライダーファウンデーションアンバサダー/初代阿南ふるさと大使
2014年に国立大学で稀な大学公認の「徳島大学サーフィン部」を設立。地元阿南市では初代「阿南ふるさと大使」として阿南市のイメージアップ活動に努める。講演活動や学校でのサーフィンスクールなど、教育現場を含む様々な場面でのサーフィンの普及に積極的に努めている。
Blog:http://minamitakechi.blogspot.jp/?m=1

INTERSTYLE magazine

INTERSTYLE magazine

2024/11/20 配信

インタースタイル2025 出展者募集中!!

2024/11/21

COLUMN

COLUMN

SURFCOLUMN

蛸優樹

「波をシェアする心:ローカルとビジターの架け橋を作るには」

SKATECOLUMN

松本夏生

「抵抗」

SNOWCOLUMN

大久保勇利

「出発」

USNET
GOCAF