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コラム

武知実波『第4回 サーフィンとこれから』

2018/04/18 tag: 武知実波

こんにちは。
気がつけば桜の季節から新緑の季節に移りましたね。
徳島は温暖な日々で、もうGWが間近なにおいがします。
自然の色が映えるこの時期は特に徳島の美しさとここに生きる贅沢をひしひしと実感しますね。

世界各地には美しい場所が沢山存在します。
ニュージーランドの自然は国がリゾート化を推進せず守っていて、オークランドから30分で美しい古代の山に出会うことができます。
ポルトガルの世界遺産のそのたたずまいは息をのむほどの壮観であったし、ニューヨークで鑑賞したブロードウェイとジャズは芸能と文化の素晴らしさを再認識させてくれました。
どこも美しく、空気、音、色、歴史が織りなす作品です。

しかし、つい先週、私はまた新たな美に出会いました。
私が今まで見てきたもの、学んできたこと、固定概念、私の持つ全てを越えていくような美しい体験を。

takechi photo

幸福の国、バヌアツ。
そこで私は素晴らしい愛に溢れた人々と出会い、文化を共有し、学びました。

最終回となる今回の記事は過去3回の総括を、バヌアツでの経験と共にお話ししたいと思います。
どうぞお付き合いください。

バヌアツへ赴いた目的は主に、サーフボードの贈呈、大会への出場、現地視察の3点です。
バヌアツは南太平洋にある島国で、後発発展途上国に認定されているそうです。
サーフィンができるポイントを有するにも関わらず、平均所得が約5万円という経済状況等のためにサーフボードを持つことができない現状があると聞き、阿南市サーフィン連盟のプロジェクトとして、日本で不要なサーフボードを必要とする国に贈呈するため、今回縁あってバヌアツにボードを贈ることとなり、現地を訪れてきました。
今回は滞在記を一部抜粋したものですので、より詳細は是非ブログよりご確認下さい。

首都ポートビラがあるエファテ島のパンゴビーチでは多くの子どもたちが足下の珊瑚も気に留めずにサーフィンを楽しむ様子を目の当たりにしました。
彼らの乗る板は全て中古品で、サイズが合っていないもの、ノーズが無いもの、壊れているものも多くありましたが彼らにはお構いなし。
波に乗るという純粋な遊びに没頭しているように見えました。
笑顔で波に乗る彼らからサーフィンの真髄を教えてもらった気がしました。

takechi photo ボード贈呈

takechi photo ボード贈呈

試合後はエファテ島からタンナ島に移動します。私たちの目的はサーフィンと現地視察。
なんとタンナ島で初めてサーフィンした日本人として現地の皆さんに歓迎していただきました。
そして現地のサーフィン実施状況と現地のサーフィンに対する意識も加えて調査してきました。
学校では皆サーフィンは知っているがボードは勿論持っておらず、またビーチから車で1時間程かかる学校であったにも関わらず、サーフィンをしてみたいと答えた子どもたちが予想以上に多く、彼らがサーフボードを携える姿を想像すると、このプロジェクトの意義を改めて感じました。

takechi photo 教室の子どもたち

タンナ島ではほとんどが4WDでないと走れない道で、子どもたちはジャングルのようなその道を、1〜3時間歩いて通学します。
車社会に生きる私たちには考えられませんが、それが彼らの日常です。
利便性を受け取る代わりに、私たちはきっと体力や第六感、大事なものを捧げてしまったのかもしれませんね。

今日本の私たちは義務教育期間には無償で教育を受けることができます。素晴らしい環境です。
バヌアツでは義務教育期間といえ授業料がかかるそうで、1家庭あたりの子ども数が多いことから、子どもたち全てが日本のように学校に通うことが難しいそうです。
そのような状況下で学校に通う彼らがサーフィンと出会うことがあるとしましょう。
それはひとつの夢を与え将来に希望を持つことに繋がるのではないかと、私は思うのです。
バヌアツには波があります。地域の産物で遊び、学び、居場所を作ること。
サーフィンには彼らの今後の人生をより充実にするための力があるような気がしました。

takechi photo 海辺の子どもたち

takechi photo

彼らの生活は非常にシンプルです。果実にしても家畜にしても、必要な分しか取らないのです。
そのシンプルさに着目してみると、果実と同じ地のものである海、その海で行うサーフィンを用いた地域活性化というのは極めて自然的であるような気がします。

最後に私がバヌアツの話を持ってきた理由。
それは、場所や分野に関係無く、サーフィンの可能性を今後も皆さんに、そして私自身に考え続けて欲しいと思うからです。
日本では、来年開催予定のラグビーワールドカップ2019を皮切りに、2020年には東京オリンピック・パラリンピック競技大会、その翌年には関西ワールドマスターズゲームズ2021開催と、来年から3年間にわたって日本では3大国際スポーツ大会が開催されます。
そのうち2つに「サーフィン種目」がスポーツとして名を連ねています。
私の父がサーフィンを始めた頃には夢で、私がサーフィンを始めた頃には目標となり、そして私が27歳を迎える年に国際的に社会的にサーフィンがスポーツという確固たる側面を獲得するのです。
そんな渦中で私たちはサーフィン、そして海、自然について、再度シンプルな考えを持っておく方が良いと思うのです。
サーフィンはスポーツであり、文化であり、私たちサーファーの生き甲斐です。
それを健全に、長期的に、次世代に向けて維持していくためには、サーフィンが元来持つ純粋な楽しさと魅力を皆さんに再認識しておいて欲しいのです。

そうした上で、持続可能な範疇で、サーフィンが人と人とを正しい関係で結び、地域貢献できる場をつくり、そして極めて状態の良い形で後生に渡していかなければいけません。
それは地域で、学校で、海で、どこからでも努力を始められるものです。
私はシンプルなそのサーフィンの美しさを愛しているし、共有していきたいと強く思います。
そのためにアプローチをします。
教育現場へのサーフィンの導入。サーフィンを用いた地域活性化に関する研究活動。そして自身が絶えずサーフィンの未来について考える。
まだまだできていることは少ないですが、これからもサーフィンと寄り添っていきたいと思います。

これから先、サーフィン業界にも、海にも、地球全体にも、現時点では予想できないことが起こっていくのだと思います。それは社会的事柄も、自然的事柄も全て含めて。
でも私たちは今を生きているのでそれらを予知することはほとんどできない。そうなれば、私は引き続き、ここまで私に良い思いをさせてくれたサーフィンに対して、これまでと変わらず恩返しできるよう努めるのみだと思います。
皆様にもご自身の側にある必要不可欠なもの、守る価値あるものについて想いを馳せる時間を持っていただければ幸いです。

最後に、上に述べた「恩返し」を私なりに形にした、修士論文のリンクを掲載させていただきます。

題目:サーフィンツーリズムを活かした地域活性化策の課題〜東洋町生見海岸の地域デザインを事例に〜
http://repo.lib.tokushima-u.ac.jp/ja/111288

この論文が少しでもどこかの地域の地域振興のお役に立つことがあれば本望です。
そしてこれから先、サーフィンに可能性を見出してくれる研究者の方が出てきて、一部でも彼らの研究の支えになることができたなら、著者としてそれ以上の幸せはありません。

長い間、そして長い文にも関わらずお付き合いくださり本当にありがとうございました。
いつの日かどこかの海で皆様とお会いできるのを楽しみにしています。
ありがとうございました。

takechi photo

武知実波

武知実波プロフィール
1993年徳島県阿南市生まれ 徳島大学大学院総合科学教育部 卒業
JPSA公認プロサーファー/パタゴニアサーフィンアンバサダー/サーフライダーファウンデーションアンバサダー/初代阿南ふるさと大使
2014年に国立大学で稀な大学公認の「徳島大学サーフィン部」を設立。地元阿南市では初代「阿南ふるさと大使」として阿南市のイメージアップ活動に努める。講演活動や学校でのサーフィンスクールなど、教育現場を含む様々な場面でのサーフィンの普及に積極的に努めている。
Blog:http://minamitakechi.blogspot.jp/?m=1

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