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コラム

武知実波『第2回 教育とサーフィン』

2018/03/14 tag: 武知実波

こんにちは。
2回目の投稿となりました、武知実波です。
今日は「教育とサーフィン」をテーマに、サーフィンを教育に導入することの意義や可能性について皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

ではこれ以下では私の学部時の研究遍歴も交えながら、大きく分けて2つの実例を用いて教育とサーフィンが混じり合った先に何があるのかを皆さんと一緒に検討していく機会としていければと思います。

大学院ではスポーツ社会学研究室でサーフィンツーリズムを研究していた私ですが、実は学部生のときは英語教育を専門としていました。
大学進学を目前としていた高校生のとき、大学で学びたいことを自問した際、それまで海外の試合にも出場させていただく機会があったこと、海外に興味があったことから、必ず英語や国際関係について学びたいと考えていました。
今書いてみるとなんとも抽象的な選択だったとも思いますが(笑)、ひとつ断言できることは、日本だけでなく広く世界を見ておかないと一度しかない人生知らないことばかりではもったいないという気持ちが大きくありました。

そして入学後、私の学部では教員免許取得が可能であったため、以前から興味の強かった教育について学ぶようになります。
4年間教育について学ぶ過程で、本当に多くの知識、そして思考を得ました。
その中で私が衝撃を感じたこと、それは社会における教育の立場は全ての基盤として大抵の分野に共通し、サーフィンにおいても同じであるということです。
そしてサーフィンを教育に導入することによりサーフィンから私たちが得られる健康やQoLの向上、環境に対する意識醸成、そして地域愛の育成などが期待されると考えました。
それらを極めて機会均等で公平な場である教育現場で行うこと、これこそサーフィンの未来であり可能性を見出すことができる最大最良な場であると私は信じています。
最近は少子高齢化の社会情勢がそのまま海に反映されているように見えることもあり、今後の未来を作り上げていく若い世代に対するアプローチというのは目下の課題であると感じています。

そんな思いも持ちつつ大学にも馴染んできた頃、大学生の内に私ができることのひとつとして、サーフィンの魅力を大学で普及させ、また大学生たちと一緒に発信源となってサーフィンの魅力を拡散していきたいと考えるようになりました。
そして大学2年生の春、「徳島大学サーフィンクラブ」を同志5人と共に立ち上げます。
立ち上げ1年後、その活動を認められ、大学公認サークル「徳島大学サーフィン部」となり、今に至ります。
全国的にも稀な国立大学での大学公認サーフィン部の設立、こちらが1つ目の実例となります。

takechi photo

部員は平成30年3月7日時点で25名、内男子16名、女子9名から成っており、私たちはサーフィンを通じてその魅力を実感し共有し、発信していくことを最大の目的として活動しています。一言で言うと、サーフィンを目一杯楽しむことをモットーとしています。
徳島大学に通う学生は大学進学を機に初めて徳島に来た人も多く、徳島に対する印象が薄いイメージが以前からありました。
悲しい例として、以前県外学生に「徳島ってなにがあるの?」と聞かれた県内出身学生が「何もないよ。」とたった一言で返していた場面に遭遇したことがあり、それが県民として本当に悲しかった。
それなら「徳島=サーフィン」のイメージを私たちから発信していけばいいじゃないと、フロンティア精神があったことは否定しません(笑)
それが功を奏したのか、今では県外出身者の学生たちがサーフィン部での経験を通じて「徳島=サーフィン」のイメージを自ら発信してくれています。本当に喜ばしいことです。

私たちの活動はサーフィンを楽しむことはもちろんなのですが、それだけではサーフィン部として完結しないと思います。
サーフィンを楽しむことに加えて重要なこと、それは地域貢献だと考えています。
そのために私たちはサーフィン連盟主催のビーチクリーンへの参加、教育現場でのサーフィンスクール、行政と協力したイベント開催などにも積極的に参加しています。

takechi photo

私たちが地域の学生としてその地域に根ざした活動を行っていくことは、どの地域においても必ず求められることだと思います。
その姿勢こそ、サーフィンの社会的地位向上に少なからず影響を与えると私は考えています。
それ故、若者世代に対するクリーンなサーフィンの継承が今求められているのです。

サーフィンをより深く教育現場に取り入れてもらうことが必要になると考え、2つ目の実例として、学校、関係連盟団体のご理解ご協力を得ながら、学校のプールサーフィン体験教室を開催するようになりました。

takechi photo

takechi photo

サーフィン体験教室は昨年から始めた試みであり、昨年は県下3校で開催することができました。
子どもたちがサーフィンを楽しむ姿は純粋無垢で、指導者冥利に尽きると言えば生意気ですが、そのくらい幸せな空間がそこにはありました。
また彼らがそれまで関わることのなかったサーフィンを学校の授業で体験するという画期的な機会を設けることができたことに関しては、学校側の柔軟なご対応とサーフィンに対するご理解があって初めて成り立っており、それに対しては心より感謝の気持ちで一杯です。
もちろんこの活動は各地でも開催されており、今後より多くの地域で実施されることを期待しています。

ここまで2つの実例を挙げて教育とサーフィンが関わり合うべき私なりの見解を述べさせていただきました。
しかしここで注意しなくてはならないことがあります。
それは主観的視点だけではなくなるべく客観的視点を持ちサーフィンの有用性を他者に伝える必要があることです。
社会的に認められること、それは誰が見ても聞いても頷ける根拠の存在が重要であり、そのためにはサーファーがサーフィンの魅力を発信することに加えて、その科学的な根拠作りはある意味非常に重要になると思います。

それが私が大学、大学院での自身の研究にサーフィンを引き入れた理由でもあります。
あまりにもサーフィン研究が少なすぎる。こんなにも素晴らしい文化でありスポーツであるにも関わらず、数字がない、先行研究がない、調査がないが故にサーフィン及びサーファーが社会に確実に与えている正の影響を証明できない。そんなのは嫌だ、じゃあひとつでも実績を作ろう、という意識で私の大学生、大学院生としての6年間は構成されていました。

教育をサーフィンに導入する有用性の立証として、ひとつ私の卒業論文を挙げます。
“Introducing Surfing into School Education and Its Effect”というタイトルの基、自身の経験からサーフィンを部活動として導入するメリットについて考える上でサーフィンと自己効力感の関係について、先行研究及びインタビュー調査を用いてその効果について考察しました。
高校のサーフィン部の部員に対する自己効力感に関するアンケート調査結果からは、彼らの自己効力感が大きいことを数字が示しており、その一例として、失敗を許容する能力が身につく傾向があることがわかりました。
調査からはサーフィンと自己効力感の相互関係は強いことが認められたことから、今後は日本国内外でサーフィン教育から有意義な学びを身につけられる環境を用意することが必要であり、それは具体的にはサーフィンが国体競技になることやそれに伴う部活動の設置などが考えられます。

前述の通り、現在サーフィンに関する研究は非常に少ない状況であり、もちろん上に述べた論文のみでサーフィンの有用性は語れません。
しかし、まだ立証できてはいませんが、サーフィンが持つ力というのは可視化すれば地域を動かす力があると信じています。
私がそう思えるのは、きっと私がサーファーで、サーフィンの魅力を身体で知っているからだと思います。
その発信方法は、このご時世SNSが最も手軽でベーシックではありますが、何を言うにも根拠がなければ物事は前には進みません。
サーフィン業界は既に過渡期に突入しています。今すぐにでも私たちはアクションを求められているのです。
その1つが教育現場におけるサーフィンの導入であると考えており、今は矮小な活動ではありますが、そこに大きな幸せが生まれていることは明らかで、あとは全国各地にこの活動のような地域に根ざした普及活動が広まればと思います。

さて実はこの原稿はインドネシアのジョグジャカルタから日本に帰る途中の経由地で書いています。
今回ジョグジャカルタを訪れたのは学会発表のためでした。

takechi photo

私の他にもサーフィンを研究対象とする研究者が日本をはじめオセアニアやヨーロッパ等世界各国から来ており、サーフィンがアカデミックな場で語られる様子を目の当たりにして、まさに今回のテーマを再考させてくれる非常に刺激的で学び多い機会となりました。
その詳しい様子はブログで記事にしていますのでご興味ございましたらまたご確認頂ければ幸いです。

そして大学で「教育×サーフィン」を研究した私は次に教育を包括する地域に着目し、本格的に地域の政策としてサーフィンの導入に向けた提言をするべく、対象を教育から地域に広げ、大学院では「地域×サーフィン」をテーマに研究をします。
次回3回目では「地域とサーフィン」をテーマに、今の各地域の行政とサーフィンの関係性や政策事例、そして今後在るべき相互関係について、研究をベースに皆さんと考える場としていければ幸いです。

 

武知実波プロフィール
1993年徳島県阿南市生まれ 徳島大学大学院総合科学教育部 卒業
JPSA公認プロサーファー/パタゴニアサーフィンアンバサダー/サーフライダーファウンデーションアンバサダー/初代阿南ふるさと大使
2014年に国立大学で稀な大学公認の「徳島大学サーフィン部」を設立。地元阿南市では初代「阿南ふるさと大使」として阿南市のイメージアップ活動に努める。講演活動や学校でのサーフィンスクールなど、教育現場を含む様々な場面でのサーフィンの普及に積極的に努めている。
Blog:http://minamitakechi.blogspot.jp/?m=1

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