「どうして手がないの?」
幼い子どもは実にピュアでストレート!悪意のない、まっすぐで純粋な質問をよくされる。
良くぞ関心を持って聞いてくれた、ありがとう!君はダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を体験し、体感し、体現している!
その感覚をこれからも深め、真にインクルーシブな世界を築いていって欲しい、と思う。
多国籍業の人事にいると、DE&Iについて考え、取り組み、時に学び、時に気づきや学びを促すワークショップを開催する立場になったりもする。
私たちは、子どもに学ぶのが一番良いのではないか?と思うので、いつか子どもと共に、あるいは子どもたちからDE&Iを学ぶワークショップも企画したいなと、あたためている。
関心をもって、私に聞いてくれた子たちには、私の左手を「触ってみる?」と聞いたり、ここに肘があって動くよ、と伝えたりしながら、でも一番は愛着を持って欲しくて、
「よく見て、目と鼻があるでしょ。私の相棒のもぐらちゃんなの。可愛いでしょ、仲良くしてね」と伝えている。
みんな可愛がってくれて、未就学児の世代の子は特に、次に会った時に、「もぐらちゃん〜、こんにちは!」と、左手のもぐらちゃんに会いたがり、もぐらちゃんに話しかけてくれる。
障がいと生きる過程で、わたし自身「もぐらちゃん」に愛着が出て、そんな風に話すようになったが、幼少期や思春期は「ふつう」になることに、一生懸命だった。
家族やとても身近にいる人は、「障がいがある」ということで、特別扱いや、頑張っているから褒めることは全くなかったが、
少し離れた人たちが好意で「頑張っているね」と、褒めてくれるたび、障がいがあるということが浮き彫りになり、とにかく目立たず、可もなく不可もなく、みんなと同じで居ようとした。
でも見た目が違うことは現実で、どこまで行っても「ふつう」にはなれなくて、実体のない「ふつう」に、ブンブン振り回されてきた。
完全にひとり相撲。
サーフィンやパラサーフインの世界を知ってから「ふつう」の概念が、ガラガラと音を立てて崩れていった。本当に「ふつう」なんて存在しないんだ、と。
サーフィンは「波と遊ぶ」ただそれだけで、遊び方に決まりはない。
サーフボードの形や長さはなんでも良いし、なんならボードじゃなくても良い。体で波に乗って遊んだって良い。
みんなそれぞれ楽しみたいように、波と遊んでいる。安全には、気をつけながら。
スリランカの東海岸、アルガンベイに行った時に、ウクレレを弾きながら波に乗っている人を見たときは、さすがにびっくりしたが、それくらいなんでも良い。
パラサーフイン界のレジェンド、Mark Mono Stewartさんのサーフィンもいつ見ても楽しそう。そしてメチャクチャカッコ良いサーフィンをする。
Mark Mono Stewartさんのように、選手としては試合にも強くて、カッコよくて、優しい人になりたいと思う。
サーフィンやパラサーフィンに出会ってから、The Search(探求)の連続で、多くの出会いや気づきを頂いてきた。
とても貴重な経験を得て「これを私だけに留めておくのは、もったいない!みんなとも多くの機会と経験をシェアしたい。」という欲が出てきている。
メンバーの想いの源泉は少しずつ違うが、選手や関係者の「パラサーフィンを知ってもらおう!」を軸に、
2023年7月に一般社団法人 日本アダプティブサーフィン協会(JASA – Japan Adaptive Surfing Association)を立ち上げた。
設立から、たった1年。これまた沢山の出会いと感動の経験があり、たった1年でこんな経験ができるなら、もっと色々な人を巻き込んで、知り・出会い・体験や経験を広げたいという気持ちが沸いている。
この1年の貴重な経験のシェアはまた、次回。
高尾千香子 | CHIKAKO TAKAO プロフィール
パラ / アダプティブ サーファー(障がい者サーファー)
一般社団法人 日本アダプティブサーフィン協会(JASA)
マルチナショナル企業 人事/HRビジネスパートナー(HRBP)
静岡出身、東京経由、千葉在住
先天性左前腕欠損(つまり生まれつき左手の肘下がありません)
2013年頃サーフィンを始め、冬はお休み夏だけ週末サーファー時代を経て、2022年にパラサーフィンと出会う。
選手として世界選手権などの大会出場と、パラサーフィンを広めるイベントや基盤づくりの2つを軸に活動。
<Instagram>
高尾千香子 @chikakotakao
JASA @jasa_surfing