「サウナのよさが分からない」。
なんの捻りもなくて申し訳ないのだが、直球でしか表現できないほど、あれのよさが本当に分からない。いや別に斜に構えているわけではないんだけど......。
今が第何次ブームなのか定かではないが、昨今、サウナが日本を席巻している。コロナ禍が呼び水となり、“個室型”や“コワーキングスペース型”なんてものもサウナ浴の流行に一役買っているのだそうだ。
たしかに、どのメディアでもサウナの3文字を目にしない日はない。例えばテレビやネットでは、やたらキラキラしたサウナばかり特集されていて、芸能人やインフルエンサーがしたり顔で「整ってますねぇ〜」などと言ってたりする。いや単にそれ、死にかけてるだけじゃないのか。
今でこそキラキラなサウナだが、本来はジメジメして暗い、アングラな遊びだったはず。僕の見当違いだろうか。
僕が子供のころ、サウナはおじさんのカルチャーだった。近所の銭湯にあったサウナは、死んだ目をした中年男性を吐き出しては水風呂へ浮かばせる、おそろしくて、ミステリアスな部屋だった。子供にとっては、サウナとアカスリが銭湯のミステリゾーン二大巨頭だったのだ。
「整う」なんて高尚そうな言葉が世間を賑わす前の話だ。僕はその時からサウナに興味なんてこれっぽっちも湧かなかったのだが、セリ前のマグロのように冷やされたおじさんたちを見て、子供心に「何が楽しいのだろう」くらいは思っていた。
その考えは今も変わっていない。サウナ→水風呂→外気浴のサイクルを3セットも繰り返し、白目を剥いている友人たちを尻目に、僕は心の中で首を傾げている。
「この熱い部屋に入って、何が楽しいんだ?」
とはいえ、僕はつい最近、重い腰を上げてサウナに初挑戦することにした。サウナーであり、サーファーでもある友人に誘われるがまま......。
photo by @mofcamera2001
だが結果として、僕の考えが変わることはなかった。
たしかにすっきりはする。外気浴でシャキッとするのも分かる。だけど、これならサーフィンのほうがよくないか。
「サーフィンとサウナを一緒にするな!」というお叱りの声が聞こえてきそうだが、僕にはサウナが至上とはとても思えなかった。そもそも比べるものではないのかもしれないが。
photo by @mofcamera2001
やっぱり海の上を滑り波に揉まれながら、太陽の下で運動するのが一番キモチヨクなれる最短の道ではないか。
だって母なる海なのだ。その中で泳ぐなんて、母親の胎内に還るようなものではないか。もっとも原始的で、もっとも効果的なヒーリング。それがサーフィンなのだ。
6時間もサーフィンすれば分かります。サウナなんて目じゃないくらい「整う」から。
(サウナーはクレイジーだが、サーファーも一般人からすれば十分に変だと思われてるはず)
photo by @mofcamera2001
とはいえ友人とわちゃわちゃ入るサウナは案外、嫌いではないことに最近気づいた。
つまりこれからも僕は、誘われるうちは友人たちにくっついて、あの灼熱のサウナに入るのだと思う。
「誰かこのよさを教えてくれ!」と心の中で首を傾げながら。
追伸
サウナを好きになりたいので、いつかサウナのお仕事をください。サウナ素人より、これを読んだサウナ業界の方へ。
text by Ryoma Sato
佐藤稜馬 プロフィール
1992年生まれ。ライフスタイルスポーツライター。
5年ほど営業マンを経験したあと、持病の“サーフィンしたい熱”を発症し地元湘南に帰る。
以来、雑誌・ウェブで波乗りやアクションスポーツの魅力を伝えている。
夏季は茅ヶ崎の海でサーフスクールを主宰。好きなサーファーはマイケル・フェブラリー。
INSTAGRAM:@jjjryoma