いろいろな意見があるかもしれないが、サーフィンにおいて最も魅力的な瞬間は、“チューブ”に入ることではないだろうか。盛り上がった波のリップが、ボトムに向かって落ちることで、筒状の空間ができる。
条件がよければ、チューブは太陽の光に照らされてグリーンにきらきらと輝く。サーファーはその「Green Room」を走り抜けることを“チューブ・ライディング”と呼び、波に包まれる瞬間を胎内に例えたり、天国に例えたりする。
とにかく気持ちいいことが大好きな僕らサーファーは、この場所に一秒でも永くいられるように日々腕を磨くのだ。
しかし近いうちに、その神聖な場所に誰でもフリーパスで入れる時代が来るかもしれない。その橋渡しをするのが、人工知能(AI)だ。
近年巷を騒がせるChat GPT(チャットジーピーティー)は、アメリカの新興企業「OpenAI社」が開発したチャットボット。人工知能を搭載していて、テキストで質問をするとそれに応じた答えを返してくれる。
その精度は恐ろしく高く、実際にチャットをしているとまるで人間と話をしているかのような錯覚に陥る。詩やエッセーを書くこともでき、最近では、学校に提出された小学生の読書感想文がChat GPTによって書かれていたことが話題になった。
試しに「サーフィンが上手くなるにはどうしたらいいか教えて」と聞いてみると、次のような返答がきた。
サーフィンが上手くなるためには、以下のような方法があります。
1.基礎を学ぶ:最初に、波乗りの基礎を学ぶことが大切です。安全に波に乗り、バランスを取り、波を読むことができるようになる必要があります。サーフィンスクールに参加することをお勧めします。
2.コンディショニング:サーフィンは体力を使うスポーツです。運動能力を向上させるために、筋力トレーニング、有酸素運動、ストレッチなどを行うことが重要です。
3.定期的な練習:サーフィンは練習によって上達します。できるだけ頻繁に波に乗り、慣れることが重要です。週に数回、時間を確保して練習するようにしましょう。
4.波を観察する:波のパターンや潮の流れを理解することが重要です。波の動きを観察し、自分が乗りやすい波を見つけるようにしましょう。
5.ビデオ撮影:自分のサーフィンをビデオに撮影して、自己分析することができます。どこで失敗しているかを把握し、改善するための方法を見つけましょう。
6.マスターサーファーの動画を見る:ネット上には多くのプロサーファーの動画があります。彼らの波乗りの技術を見て、自分に取り入れることができます。
7.適切な装備を選ぶ:適切なサーフボードやウエットスーツを選ぶことが重要です。自分に合った装備を選び、快適に波乗りをするようにしましょう。
これらの方法を実践することで、サーフィンが上手くなることができます。
ただし、サーフィンは危険なスポーツでもありますので、常に安全に注意しましょう。
どうだろう、初心者には十分な回答ではないだろうか。こうした技術革新が進めば進むほど、今まで「レベルが高い」とされてきたことへのハードルが下がる。
それに体がついてくるかという話は別にして、人工知能がサーフィン業界に新しい風を吹き込むことは間違いないだろう。
AIだけでなく、映像関係でも技術革新は起きている。GoProで撮影した映像を、今では家にいながらYouTubeやVRで“体験”できる時代になった。
もしかしたら将来、AIと映像技術を組み合わせて、未経験者同士がネット上の仮想空間でサーフィンイベント(オンラインサバゲーのような)を開催する日がくるかもしれない。
そのとき、チューブはどんな形で捉えられるのだろう。
できれば今のまま、特別な空間であってほしい。
佐藤稜馬 プロフィール
1992年生まれ。ライフスタイルスポーツライター。
5年ほど営業マンを経験したあと、持病の“サーフィンしたい熱”を発症し地元湘南に帰る。
以来、雑誌・ウェブで波乗りやアクションスポーツの魅力を伝えている。
夏季は茅ヶ崎の海でサーフスクールを主宰。好きなサーファーはマイケル・フェブラリー。
INSTAGRAM:@jjjryoma