【海の学校】
10年ほど前、僕は「海の学校」の千葉でのイベントに参加させてもらいました。
それ以来、久しぶりの参加となった今回の鵠沼でのイベントには、懐かしさと同時に大きな期待がありました。
実際に参加してみると、当時と変わらない温かい雰囲気がそこにはあり、子供たちだけでなく親御さんたちも心から楽しんでいる様子が印象的でした。
何よりも感動的だったのは、初めて波に乗った子供たちの笑顔——その瞬間の明るさと純粋な喜びが会場全体を照らしていて、本当に最高の空間でした。
【海の学校の背景】
僕は父の影響でプロサーファーを目指し、父にビッグウェーバーとしての心構えを学ぶ為にハワイで日々修行していました。
その過程で出会ったのが、「佐久間洋之助くん」と「堀口真平くん」。
僕らは、共にビッグウェーブに挑むことで、互いを高め合い、時には支え合いながらサーファーとして成長してきました。
彼らは僕に、どんな状況でも逃げない姿勢を教えてくれた仲間であり、心の師でもありました。
しかし、2006年1月、洋之助くんは海での事故でこの世を去りました。その知らせを受けたとき、胸を打ち抜かれたような衝撃でした。
それでも彼の意思を残したいと、真平くんが「洋ちゃんがやりたかったことを、俺たちで形にしよう」と呼びかけ、「海の学校」は始まりました。
こうして、仲間たちと共に次の世代へ海の素晴らしさを伝える活動がスタートしたのです。
【活動内容と意義】
「海の学校」では、サーフィンを含むあらゆるマリンスポーツや海遊びを、小学生を中心とした子供たちに広めています。
日本は海に囲まれた島国で、自然と海に触れる機会も多い国です。
だからこそ、多くの人に海の楽しさを知ってもらいたい——そんな思いが活動の軸になっています。
それと同時に、海の危険性や安全知識を学び、海難事故を少しでも減らせるような教育にも力を入れています。
また、若い頃から環境問題にも意識を向け、海と共存する大切さを考えてもらうことも目指しています。
サーフィンや海遊びを通じて、海を「楽しむ」だけでなく、その豊かさや重要性を肌で感じ、守る気持ちを育てていくことが大切だと思っています。
やはり一番大切なのは、僕らが波乗りを通じて味わった純粋な楽しさを子供たちに伝えること。
「海はこんなに楽しいんだ!」と心から思ってもらえることが、僕らにとっての最高の喜びです。
どんなに時代が移り変わっても、自然に囲まれた空間で、海と自分が一体になる瞬間——それは何ものにも代えがたい体験です。
【未来への形】
そして、海の学校がスタートして18年が経った今も、子供たちの笑顔は、当時と全く変わっていません。
ただ一つ変わったのは、18年前に生徒として来ていた子が、今ではプロになり、海の学校の先生として戻ってきてくれていることです。
小さな頃に感じた海の楽しさが、彼らの人生に影響を与え、今度は次の世代にその楽しさを伝えていく立場になっている——これほど嬉しいことはありません。
このように、洋之助くんの意思が次の世代へと受け継がれていくのを見ていると、彼が今もどこかで喜んでくれているような気がします。
これからも「海の学校」という場所を通じて、もっと多くの子供たちに海の素晴らしさを伝えていきたい。
18年前に始まったこの輪を、さらに大きく広げながら、未来へと繋いでいくことが、僕たちにできる地球への恩返しだと思っています。
きっと、またいつかどこかで洋之助くんと出会ったときに、「お前ら、やるじゃん!」と笑ってもらえるような未来を目指して——海の楽しさ、素晴らしさを届け続けていきたいと思います。
蛸優樹 (たこ ゆうき) プロフィール
1984年6月4日生まれ
職業:プロサーファー、サーフショップ勤務
活動:サーフィンスクール講師、YouTubeチャンネル「MAKA.C TV」運営
経歴:幼少期より父からサーフィンを学び、20歳でプロデビュー。
国内外の大会に出場し、ビッグウェーブハンティングなど、世界中で活躍。
現在は地元でサーフショップをで働きながら次世代のサーファー育成や商品紹介などを行う。
スポンサー:SEQUENCE、BILLABONG、GOPRO、ELECTRIC、COCOSUNSHINE
Instagram: @octopus_film