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コラム

喜多一郎『第1回 サーフィン映画「ライフ・オン・ザ・ロングボード」へのパドリング』

2021/11/04 tag: 喜多一郎

テレビ、音楽業界を通過してサラリーマンから独立したのが、1995年春。

自分の会社を立ち上げたのは数ヶ月後の初夏。始めて映画を仕事にしたのは7年後。

どうせ映画監督をするなら自己主張を強めようと思い原作、脚本、監督、音楽、プロデュースを兼任した。

今思うとかなり空回りしていた。

 

とにかく海が好きだったので、沖縄の離島を舞台にした小説

「星砂の島、私の島〜アイランド・ドリーミング〜」を書いて出版した。

手順としては小説→脚本化→ラジオドラマ化→コミック化→映画化を自分なりに構築した。

おかげ様で当時は離島ブームもあり、人気者のモーニング娘、ビギン等の配役にも恵まれて、そこそこのヒットを記録できた。

公開は2004年の2月。構想から2年かかった。

テレビ番組の制作とはスピードが大幅にゆっくりで、ヒットしたとは言え労力的には数倍のエネルギーを消耗した。

ただ、時間をかけた分、作品に対する「愛」は強く、達成感も半端なかったので次回作への意欲は沸々とした。


©星砂の島、私の島製作委員会

沖縄での公開初日舞台挨拶終了後、次なる作品のシナハンに取り掛かろうとある島を訪ねた。

それが種子島への初上陸。

自分には原作者として一貫したテーマ「人間再生」があり、

監督第一弾では大好きな「海」「南の島」「夏」を舞台に挫折した体操選手の再生を表現した。

二作目は、そこに若い頃馴れ親しんだ「サーフィン」の要素を加えたいと目論み、

多くのサーファーが憧れている種子島を次なる舞台候補に選んだ。

 

最初に訪ねたのは映画のメイン舞台にもなったサーフショップ「オリジン」。

まさにアポイント無しの飛び込み。そこから映画の物語同様、

島内中のサーフポイント、名所、人気スポットをすべてまわった。

知り合った地元サーファー、自治体の人達への取材を重ね、紆余曲折はあったものの

約二ヶ月後に「ライフ・オン・ザ・ロングボード」の原案を書き上げた。

大杉漣、小栗旬、勝野洋、他が出演した同作品は2005年5月の公開後、

日本中の海が「おやじサーファー」で溢れる社会現象を生み出したとして

NHKのニュースや各メディアでも取り上げられ大ヒットした。


©Life on the Longboard製作委員会

作品の各所には自分のサーフィンに対する愛情と拘りを詰め込んだ。

地元湘南のサーフィンシーンから始まり、ラストシーンは好きだった名作「ビッグウェンズデー」へのリスペクトを込めた。

主題歌は物心ついた頃から聴いていたサーフィンミュージックの神、

崇拝するザ・ビーチ・ボーイズの「ドント・ウォーリー・ベイビー」。

ブライアン・ウィルソンへの交渉にロスまで出向いたが、そのかいもあり、主題歌以外にも全6曲の使用許可をもらえた。

サントラ楽曲に拘る自分にとって最高の喜びだった。

 

この作品が世の中に認められたおかげで、自分は今でも映画監督を続けていられると言っても過言では無い。

公開から十数年が経過しても、映画を観て種子島に来ましたというサーファーが後を絶たず、

種子島をはじめ鹿児島の人達からの強い依頼もあり、公開から14年後の2019年には続編とも言える

「ライフ・オン・ザ・ロングボード2nd Wave」を作る事が出来たのです。


@Life on the Longboard製作委員会

(つづく)

 

喜多一郎 プロフィール
映画監督、脚本家 プロデューサー 作家。
株式会社オフィスキタ代表取締役 城西国際大学メディア学部特別客員教授
「人間再生」を一貫したテーマにオリジナル脚本で12本の映画を監督。
テレビ番組、CM等、1,000本以上の映像作品を手掛ける。
音楽プロデューサーとしても1985~90年代に数多くのヒット曲を生み出す。
今年4月、大磯に総合プロデュースをしたカフェ「OISO CONNECT CAFE」をオープン。

 

 

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