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コラム

伊藤雄和『第3回 我が青春の闘争』

2019/09/04 tag: 伊藤雄和

月日は流れ私は市内の半グレ養成施設のとある高校に通っていた。其処は全校生徒3000人程のモンスター高校で卒業迄に入学者の半分が辞めて行く。暴走族、チーマー、その他諸々の社会不適合者、様々な人種が集まり暴徒化し鎮圧の為、教師迄もが暴徒化するという凄まじい所であった。小競り合いも少しずつ落ち着き一学期も終わろうとしていた。何と無く入った陸上部でも練習すらさせて貰えず草むしりばかりやらされていた。そんなある日、校庭の反対側で一人草むしりに精を出す者がいた。隣のクラスの奴だ。「陸上部?」平生、滅多に他人に話し掛ける事の無い私は同じ境遇の彼に妙にシンパシーを感じ話し掛けてみた。
「うん、君も草むしり?何やらかしたの?俺はタバコ。」そう、この草むしりは何らかの違反行為によるペナルティとしてやらされているのだ。
「俺は部室に忘れ物して鍵借りに行くの面倒だからピッキングして入ろうとしたら先生に観られていてね。それからずっとだよ。俺は伊藤、君は18組だよね?」
「そうだよ。俺はマコ、君は19組だよね?」
そんなたわいもない会話から始まり同じ境遇の2人は休み時間にも廊下で話したりする様になっていた。そんなある日、何時ものなんて事のない会話の中で学校以外でも遊ぼうという流れになった。「マコはさ、普段何して遊んでんの?」「大体、中央公園でスケボーしてるよ。他のクラスにも一緒に滑ってる奴いるよ。」「スケボーか〜、俺も昔、やってたな〜。」「そうなんだ、やろうよ!俺、デッキ余ってるのあるからあげるよ!」「やってたって言っても子供の頃に少しかじった程度だよ。」「大丈夫だよ、上手い人いっぱい居るし皆んないい奴だから教えてくれるよ。」みたいな感じでスケボーセット一式見繕って貰い中央公園なる所へ出張る運びとなった。流石に一人でいきなり行くのは気が引けるので駅までマコに迎えに来て貰い其処でセコハンのスケボーセット一式を受け取り一緒に中央公園に向かう事になった。「ボロいけどまだ乗れるからこれで我慢してね。」「ありがとう、こんなの貰っていいの?結構するんじゃないの?」「俺、最近コンプリートで新調したから!じゃあ行こう!」そういうと、マコは板の先端部分を持ち後方の先端部分を地面に少し擦りながら走り出し板を持つ手を離すと同時に両足を板の上に乗せ右足で地面を蹴り行き交う車の間を抜け車道を駆け抜ける。私は幼少期に自力で習得したチックタックで追い掛けるも到底追いつかない。
「プッシュ出来ない?」付いてきてない私に気づき戻って来てくれたマコ。「プッシュ?」専門用語に戸惑う私。「左足を前に乗せて右足で地面を蹴って進むんだよ。」見様見真似でやってみるも上手く行かず真っ直ぐに進む事も出来ない。マコは私のペースに合わせて並走してくれている。その間もちょっとした段差があればジャンプして登ったり板を半回転さたりと自由自在に板を操っている。「慣れだよ慣れ。」とクールなマコ。なんかもう、時間かかって申し訳ないから持って歩いたよね。

駅から徒歩10分程の川沿い中央公園に着くと数人が既にスケボーをしていた。公園に着くと我々に気づいた1人が近ずいて来た。「おはよう!マコ!」手と手を少しタッチしてから拳を握ってぶつけあう。「おはよう!スケボーやりたいって言うから連れて来たよ。同じ学校の伊藤」。マコが紹介してくれたその男は私のスケボーをしている人のイメージとは異なるイデタチの大男であった。膝の破れたスリムジーンズにピチT、手首には鋲の付いた腕輪、第2関節から指が出る様に切られたカラー軍手というエキセントリックな大男は私の前に手を出して来た。私も手を出しパシっとしてからグーにしてチョン。どうやらコレが挨拶の様だ。「俺、ナオよろしく!」と言うと再び滑り出して行った。取り敢えず様子を観ようと入り口のベンチに腰掛けた。三段程の階段を飛ぶ者やジャンプ台の様な物を使い飛ぶ者、鉄の平均台の様な物を使う者と各々で自由に滑っている。私の知っている幼少期の記憶のスケボーとは全く違っていた。一通り滑り私の所に戻って来たマコに聞いてみた。「先ず何やればいいかな?」「先ずはスケボーに慣れる事だね、プッシュで公園の中廻ったりしてみたらいいよ。それで少し慣れたらオーリーだね。」「オーリー?」「そうジャンプだね。スケボーの基本になるトリックだよ。」この日は只管にプッシュの練習を繰り返したり、途中、皆でコンビニに行ったりスケボーに座りお喋りしたりと1日を終えた。この日の夜、自宅に帰ってから何とも言えぬ楽しさのあまり興奮して眠れなかった。爾来、毎日の様に中央公園に行く様になって行った。プッシュも慣れ皆で公園を出て街を流す時もなんとか付いて行ける迄となった。がしかし、オーリーの方は少し飛べるの様になったのだが、皆の様に後ろ足に板が付いて来ない。出来ないなりにも日々、成長というか何らかの変化が嬉しかった。何よりも皆で一緒にいる事が楽しかった。スケボー熱は加速して自宅に帰った後もトラックを外し布団の上でオーリーの練習する程だった。数ヶ月経った頃すっかりスケーターになった私は何時も様に中央公園に行くと既に皆来ていて何やら盛り上がっていた。「どうしたの?」マコに聞く。「日曜日に大会あるんだよね。しかも、ジャッジで大阪からチョッパー来るみたいよ。」チョッパーの事は噂で聞いている。トップシコリートで奇怪なトリックをするパンクスケーターがいるという事を。「みんな大会出るの?」「みんな出るよ。伊藤もエントリーしておいたから!」「え!無理だよ!オーリーもちゃんと出来ないのに!」するとナオが「オーリーしなくていいトリックだけで攻めれば大丈夫だよ!」「そんなのあるんだ。」ボーンレス、コップムーブなど数種類のトリックを教えてくれた。大会まであと一週間、私はオーリー練習とは別にこの数種類のトリックを習得する為に秘密の修行に入ったのであった。つづく

Ito Hirokazu photo

 

伊藤雄和(いとうひろかず)プロフィール
東京を拠点に活動するロックバンドOLEDICKFOGGY(オールディックフォギー)ヴォーカル&マンドリン担当。東京を拠点に小さなライヴハウスから、大規模の野外フェスまで、幅広く全国規模での活動を展開中。ライヴのオファーも非常に多く、年間ライヴ数平均約100本。独特な楽曲と日本語による歌詞の美しさにより、ライヴを目撃した全ての観客を巻き込む今、注目のロックバンド。尚、自身もスケートボード愛好家でありメンバー、スタッフ、知人、友人に多数のスケート関係者を含む。

 

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