『サーフボードと共に 2』
新しくOPENしたサーフショップは順調にスタートした
数か月滞在したオーストラリアで新たな出会いがあった
当時RIPCURLのチームライダーだった私は
バーレーヘッズのオフィスを訪ねデレク・ハインド氏から何枚かのスーツを調達した
部屋に転がっていたFISHテールのボードが気になりなんとなく手に取ってみたら
「タイロン、それは誰のボードかわかるかい?」とデレク
「もちろん、トム・カレンのだろ」と答えると面白い情報をくれた
ソニー・ミラーが撮影した伝説のムービー
「Searching for Tom Curren.」(サーチングフォートム・カレン)で使用された5.10のFISHボードだった
さらにこのボードをシェイプしたのは
ここから車で10分のファクトリーに居るジャック・ナイトさんだと教えてくれた
もちろん直ぐに紹介してもらいジャックを訪ねたら
100kgの熊みたいな風貌のおじさんと粉まみれで握手して
その場で自分用のボードを3本オーダーした
日本人好みのソフトなレールで「これは人気が出る」と直感した
ジャック・ナイトのボードをマニアックサーフの奈須社長に協力してもらい
輸入販売を開始したのだ
バーレーヘッズのローカルボーイでライダーの「アンソニー・ポルス」を日本に招いて
プロモーションがてらASPのコンテストに出場させたら3スターイベントで2度も優勝して驚いた
伊良湖と一の宮、運が良いとしか思えない!
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2008年リーマンショック後 外貨の内外格差が生じ
同時にインターネットの流通が盛んになり大量の外国製サーフボードが安値で市場に出回った
インターネットビジネスの猛威を軽んじていたのも事実だが
私は海外メジャーブランドボードの安売り合戦に乗るつもりはなかった
何か手を打たねば・・・といつものようにセブンイレブンに立ち寄った時店内に自社ブランド
いわゆるセブンイレブンレーベルの商品が多くなってきた事に気付いた
なるほどこれか!と電気がぱっと明るくなった気分になった
自社ブランドで低価格、高品質、職人によるハンドシェイプのオンリーワンを作ろう
ブランクスの皮むきから仕上げまで一人でこなす職人と工房を持つ2人のシェイパーと契約を交わす
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バーリーサーフボードの販売を開始し
友が友を呼ぶと言うが北海道から宮崎まで何店舗かのショップでも販売してもらえることになった
私はアメリカに渡り
カリフォルニア オーシャンサイドの天才シェイパー「スティーブ・ボイセン」と交渉し
バーリーサーフボードとボイセンのコラボも実現した
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ライダーにはカールスバットの「リッキー・ウイットロック」が加わり
いきなりトランズワールド誌の見開きをエアーショットでお披露目した
バーリーサーフボードがアメリカのメジャーマガジンのダブルページに載ったことで私はかなり興奮した
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サーフボードへの欲は尽きることはない
流行のサーフボードよりも 実際触って乗って感じることを重視した
私自身の「感性」でシェイパーを選ぶ
感が大事だ フィーリング
ここ数年何本かオーダーして気になったシェイパーが来日するので同行した
オーストラリアの「ルーク・ショート」
ルークは今年から「ナビゲーターサーフボード」のシェイプクルーに加わり
インタビューを含め仕事に携わらせて頂いた
シェイプルームで実際に見た技術は素晴らしく 繊細で丁寧だった
レールバランスとコンケーブのハーモニーは日本人に無いデザインで私の感性に火をつけた
新しい時代の幕開けを感じさせる
そして今日もサーフショップでボードを触っています
高校生の頃の情熱は今も冷めることなく34年間続きサーフィンのペースも変わっていません
インターネットのボード説明文を鵜呑みにしてリッター数や数値を気にしてボードを選ぶのはあまり勧めない
自分の大事なサーフボード選びを誰だか分からないネットの言葉だけ信用するのはリスクが多すぎると思う
あなたが信用する人に相談してサーフボードを選んでください
サーフショップはボードを買うだけではないです
海でのトラブルや長い人生のサーフィンライフを親身になって必ず守ってくれます
4回に渡り私のつたない文章に付き合って頂きありがとうございました
次号から 私が紹介するのは同じ千葉北のプロサーファー「林 順和」君です
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