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『ISA世界マスターズ選手権大会』
私が今までに経験したことのない旅の思い出です
2013年4月中旬 サーフィン世界選手権に選考されたサーファーが成田空港に集合した
私達は日本サーフィン連盟に所属する会員で
公認大会にて 年間成績の上位を占める選手より 選考された代表メンバーである
年齢別での分類により シニアクラス(35歳~44歳)マスタークラス(45歳~50歳)
そしてグランドマスタークラス(51歳~59歳)から8名に絞られた
感想を率直に述べると15歳からサーフィンを始めて 直ぐにコンテストに出場する道を選び
30年以上波乗りを追求する身として この歳で世界戦に出場させて頂けるとは感無量
人生で最高な出来事の1つである事は間違いない
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代表メンバーはお揃いのユニフォームに身を包み長い空の旅に出発した
成田~ダラス ダラス~マイアミ マイアミ~グアヤキル グアヤキル~モンタニータ
笑顔の成田から試合会場のホテルに到着までなんと38時間経過した
もう一度言う 38時間だ・・・・
ぐったりを通り越して 泥の様に倒れた
翌朝の景色を忘れない
南米の熱い日差しとカラッとした気候 地球の反対側 エクアドルの海は
長旅の疲れをすべて忘れさせるような海が目の前に広がる
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波は連日変わることなく4~6フィート(セットでダブル位)
スーパーマシンライトブレイク(レギュラーオンリー)
海に向かって右側に大きなヘッズが伸び、その崖にそって岩棚が形成されたポイントブレイク
ワンピークが棚にヒットすると極端に掘れ上がるが
基本的にはバレルにならず大きな斜面にトラックを刻むロングウォールの波質
オープニングセレモニーが行われた 20か国の地域から代表となったサーファーを歓迎するパレード、
それはそれは盛大で圧倒された
沿道に連なる南米の熱い歓迎は想像以上
「写真撮って~」「サインちょうだ~い」「お願いだから握手して~」
初めて自分がケリー・スレーターになった気分だった
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翌日からコンテストはスタート
私たちは日本国を背負い 代表として悔いの残らぬ試合をしようと誓い合い
戦いが始まった
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私の出番がやって来て ゼッケンに身を包み海へと向かった
いつものように沖に到着し浜辺の位置を確認すべく岸を振り返りあることに気付いた
何百人のギャラリーと無数になびく国旗、巨大スクリーンに映し出される自分のプロフィール画像、
「あ、俺 緊張してる・・・・」
今まで何十年も大会に出続けたが緊張したことなど一度もなかった
緊張する経験すら知らなかったのに なぜこの場面で・・?
ホーンがなり一本目の波にテイクオフした瞬間 足が震えている
後の事は覚えていない
そのヒートはインターネットLIVEで 日本の何百人もの視聴者に中継されている
もちろんそのヒートは3位敗退だった
その日の夜 眠れずに自問自答した
何のためにここに来たのだ? 皆の代表として出場させてもらったのだろう?
応援してくれた日本の人達に申し訳ないと思わないのか? 悔しくないのか?
何がなんでも全力でぶつかって散ってこい!
リパチャージヒート(敗者復活戦)で後がないもう一度だけのチャンスがやって来た
応援してくれた仲間の顔を思い出し、悔いの残らぬよう全力で試合に臨んだ
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緊張など吹き飛ばすほど全身から炎をまき散らす気合で一位通過できた
ヒートウイナーのヒーローインタビューでは
日本で応援してくれている人々への感謝の言葉を代表して伝えることができた
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この瞬間に この場所に来た意味を実感できた
私はこれまで長い間 サーフィンにたずさわり 多くの時間を費やして色々な素晴らしい経験をさせて頂いた
特に家族や仲間たちの支援は人生において大きな意味を持つ
特別な場所で感謝の言葉を述べさせてもらった事に深く感謝します
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そして私は19位でこのコンテストを終える結果となった
試合以外ではテレビのモーニングショーに出演させて頂いた
全米に流れる 英語での放送でインタビュー形式での番組進行となる
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私は日本の現状について話をしました
東日本大震災について そして福島第一原子力施設の問題、
それに津波の被害に対して日本国民は全力で復興を行っている、
サーファーも海に戻り 私達には明るい未来に向けて一歩一歩進んでいる
この放送の後 他国の多くの選手から温かい言葉を頂きました
「日本を応援しているよ」
帰国後 メンバーで話したのは 「また世界選手権に出場したい、また代表に選ばれるよう努力しよう」
もっと練習して サーフィンの技術を上げて 再度日の丸を背負いたいと
心に刻み コンテストに出場し続けます
豊田 泰史
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