前回パラサーフィンのバディのお話をさせていただきましたが、私にとってなくてはならない、もう一つバディの存在についてお話したいと思います。
そのバディは介助犬のダイキチといいます。
まずは介助犬の事を知らない、または詳しく知らないという方のために少し説明させていただきます。
介助犬とは肢体不自由者と言われる手足の不自由な人のお手伝いをする犬です。
2002年に成立された身体障害者補助犬法という法律で、杖や車椅子と同じ補装具としての位置づけで、あらゆる施設へ同伴する権利が認められています。
身体障害者補助犬とは障害者の自立と社会参加を促進することを目的に訓練された犬で、盲導犬・聴導犬・介助犬の3種類の総称です。
日本でパラサーファーで補助犬を連れている人はほとんど見かけませんが、パラサーフィンの世界選手権や国際大会で海外に行くと、多くの選手が補助犬を連れているのを見かけます。
補助犬が社会に溶け込んでいて、障害を持った方が犬を連れているのが当たり前の環境を見ると少し羨ましくも感じます。
ハワイの大会に参加するためにダイキチと一緒に渡航した時も、なんらストレスのない生活をおくれました。
日本だと珍しいために目立ってしまったり、身体障害者補助犬法の認知不足から、残念ながら同伴拒否にあってしまう事があります。
日本で現在実働している介助犬は58頭で盲導犬836頭に比べてかなり少ないです。(2023年10月1日現在)
その一番の原因だと思われるのが介助犬の認知度がまだまだ低く、当事者に情報が届いていない事にあると思います。
そういう私も介助犬のことを受傷して5年間は知りませんでした。
私が介助犬を知ったきっかけは病院で介助犬ユーザーと介助犬のペアを見かけたことでした。
そこから私の興味が湧き、申請してから約2年で介助犬ダイキチを我が家へ迎えることができました。
私が住む岡山県としても初めての介助犬の誕生でしたが、ダイキチとの生活も7年が経ちました。
毎日24時間常に一緒にいるので、もう体の一部のような存在です。
ダイキチの主な仕事は、物を拾う・お願いした物を持ってくる・衣服を脱ぐのを手伝うことで、この他にも様々なことが出来ます。
以前に外出先のコインパーキングで不注意で車から落下することがありました。
車椅子も携帯も車の中で自分ではどうすることも出来なく、体温調整の出来ない私にとっては気温30℃を超える炎天下は命に関わる状況でした。
その時もダイキチが携帯を手元に持ってきてくれて、当日宿泊予定だったホテルに連絡して助けてもらうことができ、まさにダイキチがいてくれて良かったと思える瞬間でした。
ダイキチが居てくれてよかったと思えるのは、こういったときだけではありません。
一人ではないことの安心感だったり、人と人とを繋いでくれたりもします。
実際に私よりダイキチに会いたいと思っている人は多いと思います。笑
ダイキチの存在は、私がパラサーフィンを頑張れるモチベーションの一つでもあります。
私がパラサーフィンで活躍してメディアなどで取り上げられれば、介助犬のことも知ってもらえるからです。
そして、ダイキチは私にいろいろなことも教えてくれます。
ダイキチはとにかく楽しいこと、食べること、寝ること、人と動物が大好きです。
そして心がいつも安定しているので、一緒にいる私の心も常に安定感抜群です!
ダイキチを見ていると大切なものってシンプルだなと思います。
大切な人と居ることができて、ご飯が食べられて、安心して寝られる場所がある。
これだけで充分幸せなんだと日々気付かせてくれます。
さらに私にはサーフィンがあり、障がい者となった今もサーフィンを続けられていることに、今はこれ以上の幸せは思いつきませんね。
藤原智貴 プロフィール
1974年生まれ パラサーファー(障がい者サーファー)
2009年サーフィンの練習中に頚椎粉砕骨折により頸髄損傷の大怪我を負う。
生死を彷徨いながらもなんとか一命をとりとめリハビリに取り組めるまでに回復はするも、
胸の半分から下の身体は動かず両手の握力も失い車椅子ユーザーとなる。
一年半の入院生活を終え退院後、仲間のサポートのもとサーフィンを再開。
今ではパラサーフィンと講演活動で相棒の介助犬ダイキチと全国を飛び回っている。
Instagram: @tomokichi_surf