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コラム

堀井優作『第2回 ヒトニギリノイナリ』

2020/03/18 tag: 堀井優作

わかってはいるつもりではいるが、よくわからないまままたこの土地にやってきてしまった。

繋がりたいというシンプルな気持ちがあるのかもしれない。

同じような匂いがする場所、*曼陀羅のそれのようないつもと変わらない、いや少しくらいは変わった事を期待しているが、変わらない笑顔に安堵する。

会話に色をつけよう。一瞬途切れてはまた始まる。あの時の感覚を確かめるように。空を流れる雲をなぞる。

一本のラインが途切れては鳴り止まぬ歓声と、途切れてはならぬクルセイダーの車列。

一体どこへ行くのだろうか。丁字路で*ライダーズライトに曲がっていったクルーを見送り、あたらしい朝にはまた新たなるツワモノとのセッションが待ちかまえている。

もし、宇宙人が目の前に現れたとしても、テンパらないくらいに集中している。自分の意思と今、まさに繋がっている。

気持ちよりも先に足が出る事がある、その姿はときに美しい、無意識の産物。いつもは左足を前にして板に乗っている。イメージがゲージを破りコンプレックスを凌駕する。

欲に駆られる事がある、経験が邪魔をしているのだろう。そしてそれはほとんどの場合、挑戦とは呼ばない。

何かを得て、感謝する。
何かを失って、感謝する。

いずれにしても新しいVISIONが見えたんだ。

一生のお願いをしても戻らないものは戻らない。だけども遺したいものは遺るのさ。ここに来たら札幌訛りで話すのも礼儀なのさ。

そんな日々をDAYZEとよんだりしてはそのほとんどを内側へしまい込み、たまに外側へ放つ。それの繰り返し。

ヒトニギリノイナリと、あのひとの優しさが身に染みた夜に、1人で数時間瞑想する。まだ暗いうちに寝床につく。寒さで目が覚めた朝の事もまるで昔のように話してしまう。

山は、逃げない。呼ばれもしない。行きたければ行けばいいし、行きたくなければ行かなくてもいい。交わした会話の断片を紡ぎ合わせて、日本昔話の天狗のような遊びをしているが、それはここに生きた証として、こころの奥底にしずめた理想を静かに収穫する。

じゃあまた、あれだったら、あれで。

その日、*ピュアジャムという言葉は自分の中で現代のアイヌ語となった。

 

*曼陀羅
札幌市西区にあるカレー屋さん

*ライダーズライト
対面の斜面にいるメディアクルーとのコミュニケーションで使われる言葉。ライダーから見て右手(この文章では比喩的に使用)

*ピュアジャム
プロスノーボーダー中井孝治が今シーズンリリースしたDVDのタイトル。北海道を舞台とした仲間たちとの自然なセッションの描写が観るもの気持ちすらも浄化してくれるスノーボードムービー。

 

堀井優作プロフィール
1984年生まれ
兵庫県たつの市出身
プロスノーボーダー

インスタグラム @dayze_store にてDAYZEオリジナルのネパールメイドのロングパンツ販売中。シルクスクリーンプリントサービスなど、新作もカミングスーン。是非チェックしてみてください。

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