前回このコラムを執筆した12年前は記録的な暖冬のシーズンだったと記載されています。その年僕たちはサーフボードとスノーボード積み込み、キャンピングカーに乗って富山から日本海を北上して北海道を1周し、利尻島まで行くという2週間で5000kmに渡る旅に出ました。その後そのトリップはJOURNEYSというタイトルのドキュメンタリートリップムービーとして発売されて、以降ニュージーランド編、ヨーロッパ編と続いていきました。30年近く前に僕がサーフィンやスノーボードにガッチリはまるきかけとなったのは紛れもなくこのトリップという旅が関係していて、現在に至るまでその価値観は一切変わることはありません。サーフボードやスノーボードを持って未知の世界へ旅に出るという行為はこのカルチャー最大の醍醐味だと感じています。ボードという乗り物は世界各国の共通言語のようにそのマイノリティなコミュニティが確立していて、言葉が通じなくても感動や喜びを共有できるのです。また旅は自分自信の視野や価値観を広げてくれるだけでなく、仲間との絆をさらに強固なものにしてくれます。サーフィンやスノーボードは気軽に個人でも行える遊びという側面もありますが、やはりその喜びや感動を共有できる仲間という存在は必要不可欠だと考えています。長く続ければ続けるほど、仲間という存在の大切さを身に染みて感じるようになってきました。今僕の周りにいる大切な多くの仲間達も、考えてみると過去に様々な旅で感動や思い出を共有して絆を深めてきた仲間達がほとんどです。過去に仲間達と共に経験してきた様々なトリップはそのどれもが思い出深いものであり、消してその記憶は消えることなく永遠に残っているものばかりです。サーフィンやスノーボードというツールの旅によって同じ感動を共有し、信頼関係を構築してきたTRAVELING BROTHERという存在はおそらく一生を通して離れることのないFAMILYという存在になっていくのです。そしてそのFAMILYと呼べる存在こそが僕にとっての最大の財産なのだと感じています。
今年の夏、11歳の息子と13歳の息子の友達を連れてニュージーランドへ2週間に渡るスノーボードトリップに旅立ちました。ニュージーランドは20年程前にDA FRIENDSというドキュメンタリームービーをリリースした舞台であり、その後JOURNEYSというムービーの撮影地にも抜擢した思い出深い特別な場所です。また僕が今までスノーボードやサーフィンを続けてきた結果、今現在僕が感じている“一番大切なもの”を伝えるには最も適した場所でもあります。様々な出会い、美しい景色、日本とは違うフィールドと文化、そのどれもが彼ら子供達の目にどのように映ったのかは一目瞭然でした。そして彼らと共にその思い出の各地を訪れると感極まる感情が溢れてきたのを覚えています。その旅から帰国して数ヶ月がたった今でもその一瞬一瞬が鮮明に思い出されます。おそらく僕や彼らにとっても一生忘れることのない“大切な思い出”を共有することができた素晴らしい旅となったのは間違いありません。そしてその思い出や経験はまさにプライスレスなものであり、それを共有した僕たちには今まで以上に深い絆が生まれました。この旅を通して僕は息子と親子いう関係から仲間という血縁関係以上の存在になったように実感し、息子と息子の友達もまた深い絆で結ばれました。そしてこの旅という行為を通して生まれる人と人との絆こそが僕が彼らに最も伝えたかったことであり、僕のスノーボードやサーフィンというカルチャーを通して得た最も大切な財産だということを改めて感じることができた今年の夏の出来事でした。
西田 洋介プロフィール
1997年に12SNOWBOARDSを北米で立ち上げ逆輸入をスタート。ライダーズブランドを牽引し、その後TJ BRANDやブランクスボード、AFDICEGEARをコアマーケットに投下。天神バンクドスラローム、FWTなどブランドの垣根を超えたムーブメントも牽引するプロデューサー。谷川岳の開拓でも知られる。
