横山: |
昔の政治家は、みんなかっこいいのよ。
口数多くないし何も言わないけど、やる時しっかりやるし。
うちのおやじ(風刺漫画家の故・横山泰三氏)は四国生まれで頑固。
社会表現で朝日新聞の一面に政治家の悪口を書いた。
ひねた感じで世の中を茶化してるわけ。
そういう性格をたぶん受け継いでいるね(笑)。
親父は、“政治家”と言わなかった。
いつも、「日本の政治家は品のない顔をしている。“政治屋”だ」とか平気で言っていた。
うちのおやじは批評家だから、そんなことを書くわけ。
「昔の人はいい顔していたな」といつも言っていたよ。 |
坂口: |
昔の政治家はそうだったみたいですね。 |
横山: |
男っていうのは、やっぱりああいう奴がいいのかなと思うんだ。ほんとにかっこいいもん。 |
で、「今の日本で、人として尊敬できる政治家なんてあんまりいないですよね?」と私が聞いてみたら |
横山: |
「尊敬」という言葉を久しく聞いてないなあ。 |
坂口: |
悪いことで目立つ人ばっかりで、いいことで目立つなんて稀にあるかないかで。
サーファーは、金持ちとか、偉いとか、地位とか名誉で人を見ない。
人間で見るでしょ。
そうなると政治家の見方なんて変わってきて当たり前だと思う。
本物か本物でないかだけで見る。
それは政治家でもサーファーでも一緒。
政治家でもたぶん本物はいるし、それはサーファーが見たとしても見つけられる。
今はフェイクばっかりで、それすらもいないってことでしょ。難しいよね。 |
横山: |
人間ってさ、自然の中にいると、ちっぽけな存在で、すぐ死んじゃうでしょ。
サーフィンをしていると、
自分が死にそうになって相手も死にそうになるっていう状況に出くわすわけ。
でも、そんなときにまわりに仲間がいたら助けるんだよね。
人の絆ってすごい。そして、自然の威力っていうのを思い知らされるよね。
それは普段の岸の上じゃ考えられないこと。その時に自然の凄さがわかる。
人間のつまらないこととかが、くだらなく見えちゃう。 |
「そんな経験が一度でもあったら、人生の価値観って変わってしまいそうですね」って聞いたら、 |
横山: |
価値観の変わり方、凄いと思うよ。あいつら(サーファー)見ていたら。
一様に、まず人に優しくなるね。すごいよね。
そういう経験をしたサーファーって、みんな優しいんだよ。 |
坂口: |
無人島に行ったら生き残るのは僕たちだよ。
人間の根本は、どっちだっていう問題だよね。
自然に詳しかったり、根本的な生命力っていうのは、生きていくうえで大事だと思う。
お金を稼ぐことだけじゃない。 |
横山: |
本当のことって1割、10人いたら1人がわかっていて、
その1人がちゃんと伝えてあげたらいいようになってる。
本質は1人でいいのよ。僕は常々そう思っている。
だから、全員わかっちゃったら怖い世界になる。宗教と同じだよ。 |
(ここで、私、思わず
「みんな泰介さんになっちゃったら、すごい世の中になりますよね(笑)」と言ってしまう…。) |
坂口: |
最高だな。そしたら、戦争なくなるよ。
総理大臣、泰さんのほうが、麻生さんよりよっぽどいいと思うよ。
マニフェストで、3日間サーフィンさせてくださいよ(笑)。逆マニフェスト! |
横山: |
国のためなんか思ってやっている人は一人もいないのかもね。
よしんばいたとしても、いろんな思いに流されて、
最終的にはできなくなってしまう政治の構図で…。
公約をいくら宣言しても、なあなあになってしまう。
そんな人たちに日本を任せるというのも、どうかと思うよね。
日本人はすごい優秀な民族なんだから、もうちょっと何とかしないと。
あっ、だんだん違う話になってきた…。 |
坂口: |
わかりますよ。
サーファーは、要するにデカい波にいけるかいけないかだけの話で、
百の言葉より一本のライディングでわかっちゃうことができるから、
ちゃんと上下関係も生まれたりするんだと思う。
都会は全部、基本的に嘘なのかもしれない。
街では、嘘がと通ってしまうけれども、海では基本的に嘘は通用しない。ダメな奴はダメだし。
本物というか、真実をその中から自分で見つけないといけないでしょ。 |