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surf columnSURF COLUMN 2009/6/3  
Kizuna
Meiko Shinomiya
(株)COSTA BLUE代表
雑誌編集のかたわら翻訳などいろんなお仕事楽しんでます!
湘南・鎌倉在住。波があったら七里ケ浜で入っている、はず…。
FLipper』『SURFERGiRLS』および4月下旬創刊フリーマガジン『湘南SURF JOURNAL』編集長
1回目 2009/4/15 『人生の台本』
2回目 2009/5/20 『サーフボードを持たない旅』
3回目 2009/6/3 『ボーダレスな海』
4回目 2009/6/17 『無人島に行ったら、生き残るのはサーファー?!でしょう』

『ボーダレスな海』


もうすっかり、夏の前触れを感じさせてくれる日々が続いていますね。
ふと気づけば、紫陽花が家の軒先で咲いています。

海から遠ざかっていた私もそろそろ、波乗り本格復帰したいなと思っています。

寒くて家に閉じこもっていた冬の間、
SNSコミュニティーサイト『マイスペース』にハマっていました。

ウェブサイトを通じて、世界各地の波乗りを愛する人とコミュニケーションがとれて、まさにボーダレス。

まるでマイスペースの中で生活しているかのような感覚になり、時を忘れて満喫していました。

今さらながらですが、ウェブサイトというのは
実に空恐ろしいボーダレスな世界。

自分ひとりでは絶対に知り得なかった人や情報を集約して、
それを境界なく公開している実態のない存在なのですから。

つくづく不思議な世の中に私たちは生きているものだなあと思ってしまいます。

一方で、海も、まさにボーダレスを代表するような存在。

世界中の他の国々とつながり、職業や年齢、性別を越えて、みんなが交流できるし、
ボディボードやサーフィンのように海を楽しむ人もいれば、
漁師さんのようにそこが生活の場である人もいます。

そんな様々な人たちと交流できるところが、ボーダレスな海のいいところ。
今住んでいる町でも、海がなかったら知り合えなかった人たちがたくさんいます。
でも、決してウェブサイトのように無限に近い空間があるようでない海は、
ボーダレスな状況は時に死活問題だったりもするわけですが…。

波の乗り方ひとつとっても、BB、ショート、ロングなどの違いがあって、
流行りすたりもあるけれど、個人の立場で言うと
ボディボードもショートもロングもパドルボードも関係なく、
人は純粋にいい波に乗って楽しみたいだけなのです。

最近、海でよくアライアを見かけるようになりましたが(鎌倉・七里ケ浜では特に…!)
古代ハワイアンがこのフィンもないただの板きれに乗っていたその昔から、
海にはスタンドアップからベリーボード、ボディサーフィンまで、
あらゆる手段で波に乗る人たちが溢れていたのです。

そんな時代には、海はもっとボーダレスだったのでしょうか?

実は、そんな時代の裏側を垣間見てみると、
その昔ですら、波乗りの世界においてもはっきりとした境界線が引かれていたようです。

ハワイでアライアよりも長い板(“オロ”と呼ばれる)を所有できるのは身分の高い皇族だけで、
オロを持っているということは一種のステイタスだったみたいです。

一般庶民はみんなオロまでの長さのものは持てない。
その頃の絵を見ると、皇族が悠然と家の前に長いボードを置いている作品などを多く見かけます。

境界ある世界があった過去があるからこそ、ボーダレスという概念ができあがったわけで、
どんな次元でも、最初から完全なボーダレスはありえません。

遥か沖からのウネリが到達し、波となってブレイクし、岸までたどり着く。
生まれてきた一本の波の命を余すところなく楽しみつくしてあげたい。

そのためのいろんな道具があれば、なお楽しい。

俯瞰で一本の波を眺めてみると、

ウネリから乗ってこられるスタンドアップ・パドルがいて、ロングボーダーたちがテイクオフして
ショートボードがプルアウトしたさらにあとから、インサイドの掘れたセクションを滑るBBがいて…、

というように、一本の波を無駄にすることなく遊び
この海と波をもっと広く自由な気持ちで人々が愛おしみ、慈しんであげられたら、
波乗り人にとっても、波にとっても幸せなことではないでしょうか?

ボーダレスになるのもならないのも、私たちの気持ち次第。

今まで境界線だと思っていて一歩引いていたところから、
足を踏み出せばそこから世界は広がり、
その境界線を自分で取っ払った時点からすでにそこはボーダレスになるのですから。

いつだって、笑って波に乗っていたい!
ただただ、そう願うばかりです。


surf columnMeiko Shinomiya
1回目 2009/4/15 『人生の台本』
2回目 2009/5/20 『サーフボードを持たない旅』
3回目 2009/6/3 『ボーダレスな海』
4回目 2009/6/17 『無人島に行ったら、生き残るのはサーファー?!でしょう』
 
 
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